BVカウントダウン当日!





待ちに待った、約束の日。
9月27日。
それは、貴方のお家に彼らがやって来る日。
そこではきっと、こんなバトルが繰り広げられているのかもしれない――…。


「…………」
「…………」
「…………」

何故こんなことになってしまったのか。
最愛の彼女をいつものように自宅まで迎えに行こうとした先で、濱田慎之介と二之宮悠斗、そしてルーシーはばったりと出会ってしまったのである。
……まあ、三人の目的地が同じ場所であることを考えれば、それは当然なのかもしれなかったが。

「…………」
「…………」

ちらり、ちらり。
悠斗とルーシーの間で、何やら腹黒い視線が行きかった。
お互いに浅く顎を引いて、了解を示し。
同時に叫ぶ。

「あ、あんなところにプリンセスが!」
「姫がハマーのこと呼んでるよ!!」
「え、どこどこハニーちゃんどこー!?」

悠斗とルーシーの誘導した先へと、がばっと体ごと向き直る慎之介。
そしてそれを同時にスタートを切ったのは、悠斗とルーシーの二人だ。
二人して、まずは協力することでライバルを一人脱落させようという狙いである。
こういう時だけ、この二人はとても良いコンビネーションを見せる。

「あれ? ハニーちゃんどこ?
二之宮クン! 磯野キュン!
おれ様のセンサーにハニーちゃんがひっかからないヨ!?」
「壊れてるんじゃないですか!」
「壊れてるんだよ!」
「っていうかなんで二人ともそんな全力疾走……!?」

日頃あまり見せない俊足ぶりを発揮して、全力で彼女の家までの道のりを駆け抜ける悠斗とルーシーの背後で、慎之介が戸惑いがちの声をあげる。
そして何やらピコピコと懐から取り出した機械をいじり……。

「……!!
ハニーちゃんにつけた発信機はハニーちゃんのおうちから動いてない!!!」

騙されたことに気づいた慎之介も、一息遅れて二人へと追いつくべく走りだす。
日頃運動は不得意だと言ってはばからない慎之介ではあるが、ハニーちゃんがかかれば何でも不可能を可能にする男、それが濱田慎之介である。

「ちッ……、追いつきましたか!」
「ハマー、しつこい!」
「ハニーちゃんとデートするのはおれ様だよ!!」

繰り広げられるデッドヒート。
普段あまり機敏に動くイメージのない三人が、彼女とのデートのためだけに懸命になって住宅街を駆け抜ける。
誰よりも早く、彼女の腕に飛び込みたい。
楽しくデートに出かけたい。
待ち合わせの時間が近づいたからか、彼女が家から出てくるのが見えた。
ほぼ同着で、三人は彼女の前でぴたりとこれまでの勢いが嘘だったようにぴたりと立ち止まった。
そして、一息。

「……ふう」
「……はあ」
「……っはあ」

呼吸を整るのも同時だったのならば、次の瞬間口を開くのもやっぱり同時だった。
ここまで必死に走ってきたのが嘘のよう、いつものマイペースを装って手を差し出す。

「僕とデートしてくれないか、プリンセス。さあ、行こう」
「姫とデートするのはルーシーだよ。
ほら、姫、二人の世界を奏でよう」
「おれ様と遊びに行こうよハニーちゃん!
ドリーミーでパーペキーなデートにしてあげる!」

さあ。
ふたりだけのトロけるほど甘い生活が、今始まる。


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