BBVカウントダウン三日前!





「……会いたいな」

ふと。
そんな言葉が、無意識のうちにルーシーの唇から飛び出していた。

(……あ)

「ルーシー、何か言った?」
「何も」
「そ? なんか聞こえたような気がした」
「気のせい」

何か言ったな、と自覚したのは放課後の図書館にて同じテーブルを囲んでいたクラスメートの視線を受けてからのことだった。
それにそっけなく答えながら、ルーシーは誤魔化すように手元の資料のページをぺらりと一枚めくる。
いつもなら課題や宿題の類は、教師に睨まれない程度にそつなく一人で片付けてしまうことの多いルーシーなのだが、今回はグループで取り組まないといけない課題が出ているのだ。
今はそれぞれが調べてきた内容を一つにまとめるために打ち合わせの真っ最中だ。

「あー……眠ぃ。
昨日これ調べるってあんま寝てねーんだよ」
「俺は腹減った……。
今日の昼、麺類食っちゃってさ。
消化速すぎ。やっぱり米にしときゃよかった」

そんなボヤキを交えながら、ルーシーたちのグループは淡々と作業を進めていく。
方向性は決まったし、何をどうまとめるのかももう決まっている。
後は手順通りに、それぞれが調べてきたことを一つの形にまとめあげるだけ。

「俺こっちの資料写し終わったから、次ルーシーが持ってるヤツ貸して」
「いいよ。ルーシーのとトレードして」
「あ、それじゃあ俺はそっちの取って」

別に仲が悪いというわけではないのだが、写本という単純作業を早く終わらせようと思うと場は沈黙に包まれがちだ。
サラサラとシャーペンを動かす音、時折資料のページをめくる音。
そしてまるでそんな沈黙を埋めるように、

「ねみぃ」
「腹減った」

なんて無意識の言葉がぽつぽつとあがる。
皆意識は手元に集中しているため、何か会話をしようとして口を開いているというわけではないのだ。
ただ何気なく、本能が駄々漏れている。
鳴き声に近い。

「……会いたいな」

先程よりも少し、確信犯的な響きをこめてルーシーは呟く。
食欲や睡眠欲を上回って、当たり前のようにルーシーの唇から零れた音。
彼女を乞う、言葉。
無意識に、当たり前のように、さりげなく、欲望が溢れていた。

彼女に会えるまであと三日。
ルーシーは何度その言葉を呟くことになるのだろうか。