FGカウントダウン二日前!





「ベリーちゃんにあーいーたーいー」

虎太郎はめっそりとした顔で呻きつつ、べふんと自室のベッドへとダイブした。
片手にはしっかりと携帯を握りしめたままだ。
もしかしたら、ベリーちゃんから何かしらメールがあるかもしれないし。
もしメールがなかったとしても、携帯を開けば待ち受けに設定している可愛い彼女の笑顔を見ることが出来る。

「…………」

早速彼女の笑顔が見たくなって、ぱかりと携帯を指先で押しあけた。
ぱ、と明るくなる待ち受け画面、何よりもまぶしい彼女の笑顔に、自然と虎太郎の顔も緩む。
TYBで出会い、TYBが切っ掛けで付き合い始めた可愛い、何よりも大事な彼女。

「会いたいなー」

ぽつり、と呟いて、ついでに携帯の日付を確認して、はふりと再び何度目かの溜息。
何度見なおしたって変わらない。
今日はまだ、5月29日だ。
彼女と久しぶりのデートの約束をしているのは、2日後の5月31日。
こういうとき、学校が違うというのは辛い。
学校が同じであれば、何かの折に校内で見かける……、なんていう嬉しいハプニングもあるだろうに、違う学校ともなれば約束なしにはなかなか会うことも出来ない。
いっそのこと、偶然を装って会いにいってしまおうか。
偶然を装って、彼女の家の前で待つのだ。

「どう考えても偶然じゃないっしょ……」

自分でツッコミを入れてしまった。
校区も、生活空間も基本的には重なってないのである。
それで偶然と言い張るのは、なかなかきつい。
必死すぎる。
ごろり、と虎太郎は寝返りを一つ。
もう恋人になって半年。
そろそろ落ち着いたっていいんじゃないのかと思わなくもない。
自分でも自覚があるぐらいに、さんざんバカップル行動はしてきているのだ。
一日に一回は必ずメールをするし、電話だってする。
放課後に落ち合ってデートをすることだって珍しくない。
休日ともなればなおさらだ。
ただ、31日までのしばらく、お互いの予定が会わなくて会えなかっただけ。
ただそれだけなのに、こんなにも彼女が恋しくて仕方がない。

「ベリーちゃんー」

胸にこみ上げる恋しさを誤魔化すように呟いて、ごろん、と寝返りをもう一つ。
もふ、と何かが頭に当たったので、視線を持ち上げてみる。
まるまるとした巨大マルッチーのぬいぐるみと目があった。

「…………」

マルッチーと見つめ合うこと暫し。
なんとなく、マルッチーを手に取ってみる。
ふかふかとやわらかい、ぬいぐるみの感触。
もしかしたら、このマルッチーを力いっぱい抱きしめたら、ちょっとぐらいは満たされるかもしれない。
彼女をぎゅーっと抱きしめたときの満足感に似た何かを、感じられるかもしれない。

「ぎゅ〜〜〜!」

自らを鼓舞するよう、テンションをあげてぬいぐるみを力いっぱい抱きしめてみる。
ふす、と空気が抜けるような切ない抱き心地に、涙が出そうになった。

「にゃああああああ、ベリーちゃんに会いたいよー!
 早く31日になってー!!」

マルッチーを抱えたまま、ごろんごろんごろん。
地団駄を踏むかわりに、虎太郎はベッドの上を転がりまわる。
そして。

「ぎゃ!」

見事ベッドから落下した。


FG発売まであと二日!
頑張れ岬虎太郎!