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九条拓海は、悩んでいた。
恋人である少女と約束をしている日まであと一日。
そこまで約束の日が迫ってきているというのに――…、未だ彼はピュアでラズベリーな男というものの答えが見つけられていないのだ。
曰く、琉堂イエスは色がラズベリー。
曰く、百瀬歩夢は純粋さ故にピュア。

(では俺は何故ピュアラズベリーなんだ……?)

考えること数日。
答えは未だに出ていない。
色から入るのが一番簡単だろうかと、ピンクの上着に手をかけてはみたが……。
普段わりと落ち着いた色合いを好む拓海にはいかんせん難易度が高すぎた。
では次は内面から攻めるしかないと考え直してみたが、それまた拓海には難しそうだった。
百瀬の純粋さは生来の性根だ。
それを見習い、行動を真似ることは出来なくもないだろう。
だが果たして、そうやってその純粋さを真似してみたところで、果たしてそれをピュアと呼ぶことが出来るだろうか。
いや、出来まい(反語表現)。

「……むぅ」

むっつりと眉間に皺を寄せて、拓海は悩む。
プリンセスに相応しい男になって、明日の約束の日に彼女を迎えに行きたい。
そう思っているのに、ピュアでラズベリーな男というものがどんなものなのかがわからないのだ。

「俺では……、君に相応しくないのだろうか……」

そう呟いてうつむいた先には、可能性を求めて捲った辞書。




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ピュア【pure】
[形動]混じりけのない様。純粋。穢れのない、純潔な様子。

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「混じりけなく……、純粋で、穢れのない……」

ぼんやりと呟いて。
そこで、ふと拓海は気付いた。
その形容が誰よりも相応しいのは百瀬ではない。
彼が恋してやまない、少女だ。
彼女にこそ、ピュアという言葉は相応しい。

「……っ!」

辞書のページをめくる。
項目はもちろん、[ラズベリー]だ。
そしてそこで拓海の目に飛び込んできたのは、可愛らしいピンクに色づいたハートの形をした果実だった。

「この可愛らしさ……。
そうか、ピュアラズベリーとは……、彼女のことだったんだ……!」

九条拓海、結論に辿り着いた瞬間である。

「そうか、そうだったのか……。
わかった気がするよ。
俺は俺らしく……、君に相応しい男になって君を迎えに行く……!」

ぐ、と拳を握りしめる拓海。
こうして。
九条拓海が全身ピンクで彼女の玄関先に立つ未来は回避された。