「じゃあ……、年少クラスを見ようかな」

(年少さんってどんな感じかな……。
 一番ちっちゃいから、きっと素直な子たちだよね)

「君が年少クラスを見てくれるなら、それじゃあ俺は年中クラスを見てこようかな。
……イエスのこと、ほっとくと後が怖いし」
「では私が年長クラスですね。
今日も一日、よろしくお願いしますね」
「はーい」
「はい」

というわけで。
謎の一日保母体験開始したのだった。


☆★☆


おそるおそる、教室の扉を開く。

「あ、せんせいじゃん!
きょうはおれたちんとこ、きてくれたんだな!」
「わあ! せんせいがきてくれて、おれもうれしいですっ!」

扉を開いた瞬間、とことこと小さな足音が二つ重なって響いた。
小さな二人組が、彼女の足元へとまとわりつく。
想像以上に小柄なように感じてしまうのは、ここが年少組だからだろう。

(そっか……、この二人、同い年なんだよね)

いつもは学校が違うこともあって、同級生というイメージのない伊織と歩夢だ。
可愛らしいクマさんのぬいぐるみを抱えた歩夢は、わりと彼女の記憶の中にある彼の姿とイメージが重なりやすいが……。
問題は伊織だ。
年下でありながら、いつもなら見上げざるをえない彼が、今はこんなにも小さい。
今ならば、歩夢とも同じぐらいの背丈だろう。

「二人とも可愛いなあ」
「えへへ、うれしいですっ。
でも、せんせいのほうが、おれなんかよりも、ずっとずっとかわいいですよ!」
「おう!」

小さくて可愛らしい二人にそんなことを言われてしまうと、なんだか表情が緩んでしまうばかりだ。
二人まとめて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてしまいたいような衝動。

「あ、きりしまさん」
「なんだよ、あゆむ」
「せんせいにあそんでもらうまえに、おもちゃばこをかたづけたほうが、いいんじゃないですか?」
「……あ。
そうだよな、ちらかしたまんまじゃ、すじがとおらねえよな」
「おれもてつだいますよ!」
「まじで? さんきゅーな、あゆむ」


わたしも手伝うよ。
歩夢くん、先生みたいだね。