「じゃあ……、年長クラスを見ようかな」

(年長っていうぐらいだし……。
 それならわたしにも、なんとかなるかもしれないよね!)

「君が年長クラスを見てくれるなら、それじゃあ俺は年中クラスを見てこようかな。
……イエスのこと、ほっとくと後が怖いし」
「では私が年少クラスですね。
今日も一日、よろしくお願いしますね」
「はーい」
「はい」

というわけで。
謎の一日保母体験開始したのだった。


☆★☆

おそるおそる、教室の扉を開く。

「せんせい!
きょうは、ぼくたちのクラスを見てくれるんですね!」
「おれも先生がきてくれたことをうれしく思う」
「はにーちゃぁあああああん!!」
「あっ、こらしんのすけ!」
「わ!?」

どしん、と足元に衝撃。
体勢を崩すほどではないが、驚いた。
慌てて視線を足元に下ろせば、彼女の足にぎゅーっとしがみつく慎之介の姿が。
こうやってくっつきたがるところは、いつもとまったく変わらない。

「はまだくん!
せんせいがころんだらどうするんですか!」
「そうだぞ、はまだ。
先生になにかあったら、どうせきにんを取るつもりだ」
「だいじょうぶかい、せんせい」
「お、おれさま……っ、おれさまただ、はにーちゃんにぎゅーってしたかっただけだモン!」

びええ、と泣き出しそうに目に涙を浮かべる慎之介。
その慎之介相手に、小さな手を腰にあてて怒る悠斗。
こんこんと慎之介に危険性についてを諭す拓海。
そして小さいながらに、お兄ちゃんの風格で彼女を伺う哲。

(み、みんな可愛いなあ……!)

こんなにも小さくて可愛らしいのに、彼ららしさはちっとも損なわれていない。


わたしは大丈夫だよ。
怪我がなくてよかったよ。
泣かなくても大丈夫だよ。
心配してくれてありがとう。